名探偵との帰り道──なぜか行きつけとなった民謡居酒屋。
ふと「そういえば、お店にメイド姿の写真があったかな?」と思い出し、スマホを取り出す。
ページをのぞくと、お礼日記がアップされていた。
どれどれ……
こ、こ、これは……。
ちょうどその瞬間、ビールが届く。
「いったん冷静になれ」と自分に言い聞かせ、スマホを伏せて一気に飲み干す。
通りすがりの店員にお代わりを注文し、再びスマホへ視線を戻す。
さっきは斜め読みだったが、改めて読み返すと冒頭は形式的なお礼……ふんふん。
だが、次の一文で思わず固まる。
「私も◯◯◯さんと同じく3時間、お話出来る気しかしません」
「今日は今頃◯◯◯さんと2回目お会いされている頃でしょうか。いいなぁ、私もまざりたい笑」
……◯◯◯さんとは名探偵のことだ。
名探偵のお礼日記に「多分、あと3時間は話が出来た」とあった
なぜ同じ店のキャストの話を出すんだ。
しかも、オレが今日“とうろう”していることまで書くとは。
混ざれるわけがないだろう。いったい何を考えているんだ?酔って書いたのか?
──いや、今酔っているのはオレの方か?
さらに続く。
私のアニマル診断はキリン
「見た目は好みではないものの、だから気になる理由だったのですね!笑」
……これを他の客が読んだらどう思うんだ。
「見た目は好みじゃない?」なんて、お礼日記に書くか?
けど──再び指名された私はすごい、とでも言いたいのか。
「お菓子あげたの3人目」も何故か嬉しくて
……ならば他の客と同じように、手間を惜しまず「JALのアメ写真でも」載せとけよ、と言いたい。
「エクボ好きとの事でしたが、私も薄っすら左エクボがあるのですよ」
……そういえば、エクボがある子がタイプだと話した記憶がある。
気づかなかったオレを責めているのか? いや、オレにも一応うっすらあるぞ。
何なのだ、このお礼になっていないお礼日記は。
しかも名探偵と会っている、そのまさに同じ時間帯にアップしている。
なるほど……確かに、この内容では会う前には上げられないわけだ。
そう思いつつも、胸に別の考えが浮かんできてしまう。
──まさか。名探偵と会った“後”に、この日記をオレに読ませたかったのか?
オレのこと……。それとも罠なのか……??
……いいだろう。
明日は飛行機移動でたっぷり時間がある。
こちらからの「口コミメッセージ」で、仕掛けてみるか。
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