レザークラフトの駄作が優秀だった

旅行中にカードがかさばるのが気になり、薄さ0.5ミリの革で軽量カードケースの試作を作ってみることにした。今までは1ミリだったので今回はトライアンドエラー。

又、レザーを触るのは1年ぶりくらい。「ちゃんと作れるかな」と思いながら始めたが、革が薄いのでペーパーカッターでのカットも楽。「これは簡単に終わるな」と思っていた。

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……完成品を見るまでは。

革の重ね方が逆。

「ハトメを外して打ち直すか」とベランダへ。

すると、向かいのマンションの階段に人影が見えた。

ハトメ打ちはハンマーの音が結構響く。「さっき、うるさかったかな!?」と思い、しばらく様子を見ることにした。

20分後。

まだいる。

ハトメ打ち棒とハンマーを回収し、駐車場に作業場所を移す準備。

10分後。

……まだいる。

「こっちも大きな音を出した自覚はある、しかし、逆に監視されてるようで怖くなり証拠を残すことに」

そう思って、更に10分。

もう一度様子を見る。

あれ?

ずっと両手で手すりにつかまって下を向いたまま動かない。

よく見ると、足元に白いものがある。

観劇の時に使うオペラグラスを取り出して覗く。

えっ。

踏み台。さっきなかったよね。そんなもの。

しかも、その上に乗っている。

嫌な予感しかしない。

すぐに110番した。

マンション名を伝えると、5分ほどでパトカー、救急車、消防車の順に到着。20人を超える規模に。

「福岡県警、早っ!」

……と思ったものの、現場が分からないようでマンションの周りを行ったり来たり。

結局、自分も下へ降りて事情を説明した。

その後、無事に保護。

ただ、救急車の中からは1時間近く出てこなかった。

なんとなく複雑な気持ちになり、警察官に尋ねた。

「40分近く様子を見ていて、途中から踏み台まで置かれたので通報したんですが……通報してよかったんでしょうか?」

返ってきた言葉は、

「助かりました。」

だった。

その一言で救われた気がした。

こちらこそ、ありがとうございました。

実は昔、不可抗力で飛び降りの瞬間を見てしまったことがある。

JR大阪駅から劇団四季劇場へ向かう途中、階段を上がった瞬間に悲鳴が聞こえ、黒い影が目の前を一瞬で横切り、大きな音が響いた。

あの光景は今でも忘れられない。

保護された方にも事情がいろいろあるのだろう。

そんな出来事で心が落ち着かないまま作ったカードケースは、過去一番の駄作だった。

でも、もし最初からうまくできていたら、ハトメを打ち直そうとは思わなかった。

ベランダへ再び出ることもなかった。

そう考えると、この駄作には意味があったのかもしれない。

修復して大事にしよう。

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