今日は余裕をもって出発しようと、漫画喫茶の8時間パックを使い切る前に出ることにした。
サクッとシャワーを浴びて、体の疲労度をチェック。
昨日までかなり移動しているけど、道が直線ばかりだったせいか、疲労はほぼなし。
店員さんに大量の使い捨ておしぼりをいただいて出発する。
そう、フロントガラスが汚れているのだ。
借りた時からの拭き残し。
車体はきれいなのに、一番重要なガラス部分をきれいに拭かないとは……。
朝日が差し込むと、フロントガラスの点々とした汚れがやたら目につく。
こういうの、気になるんだよな。
知床へ向かうので東方面へ。
まずはガソリンを入れて、コンビニでおにぎりを購入。
車内を汚さないように、海苔のないタイプをチョイス。
配慮のできる大人って感じだ。
途中、浜辺に車を乗り入れて投げ釣りをしている人たちを発見。
この車で砂浜に乗り入れたら、谷亮子にバレるだろうな……と思い、自粛。
しばらく眺めていたけど、竿が曲がる気配はまったくない。
釣れそうにないので、再出発。
移動しながら、知床五湖をどのルートで回るか考える。
どうやら、ヒグマの生息地にお邪魔するという心構えが必要らしい。
選択肢はこんな感じ。
① 一湖だけを見る
高架木道なので、電気柵もあり、クマに襲われる可能性は低い。
② 一湖・二湖を見る
60分程度のトレッキングコース。
二湖以降は世界自然遺産区域なので、レクチャーを受けて「立入認定証」が必要。
③ 一湖~五湖を見る
90分程度のコース。
④ 一湖~五湖をガイド同行で見る
3時間ほどかけて、ガイドに案内してもらう。



パチ屋のイベントカレンダーみたいな目撃情報を見ていると、水曜日って危険じゃないか???
しばし熟考したが……
まあ、行ってみないことには分からない。
ということで、行くことにした。
③をチョイス。
ただし、クマ対策は必要。
音を出しながら歩けば、クマも距離を取るらしい。
ならば、六甲おろしのリズムでペットボトルを叩けばいい。
「阪神ファンがいる!」
と思って逃げ出してくれるだろう。
最悪、クマと近距離で出会っても、以前見た「ザ・ファブル」のように、手を広げて背中を見せず、ゆっくり動けば何とかなるだろう。
それでも向かってくるなら、折りたたみ傘でエリマキトカゲ作戦だ。
一番危ないのが子グマらしい。
木に登っていることもあるので、上にも注意しろとのこと。
そして、子グマの近くには必ず母グマがいる。
……そりゃそうだ。
講習を受けたのは4人。
そのうち2人はガイド同行。
残った私と、もう一人の男性で出発する。


なぜか自分が先頭。
傘を手に、完全に戦闘態勢だ。
というより、かなり怖い。
この歳になって、こんな恐怖を体験するとは思わなかった。
「あれ? この前もこんな感覚になったな……」
いつだっけ?
「あぁー、USJのジュラシック・パークのコースターだ」
思い出さなければよかった。
恐竜を連想し、余計に怖くなった。
「こういう場所で、ラプトルが出てきたよな……」
なんて考えながら、ペットボトルを叩きまくる。
そして耳を澄ます。
……クマ、いない。
よし。
上にも注意して進もう。
そうやって進んでいるうちに、後ろの人との間隔がどんどん開いていく。
完全に一人旅。
そこへ雨まで強く降ってきた。
ヤバい。
雨音で周囲の音が聞こえなくなる。
これは気配を消してしまう。
もう頭の中は真っ白。
早歩きで、とにかく進む。
そして、ほぼ60分で完走。

受付に戻ると、
「早かったですね」
という感じで、ちょっとニヤつかれている。
そりゃ早くもなる。
こっちは命懸けなのだ。
無事に戻ってきた安心感で、急に腹が減ってきた。
「腹が……減った」
まさに孤独のグルメのゴローさん状態。
道の駅で「ナメタガレイ一夜干し定食」を食べる。
これが、
「なにこれ、うまい!」
身がふっくらしているのに、ホロホロ系。
かなり好み。
縁側まできれいに食べていると、近くに香水のきつい人が座ってきた。
……退散。
もう少し食べたかった。


そして、忘れるところだったけど、ドラクエウォークのランドマークもゲット。
知床五湖は冬季閉鎖になるため、道の駅に併設された知床文化会館が新ランドマークになっているようだ。
こんなところをランドマークにするとは……。
まあ、取れたからいいけど。
その後も安全運転。
対面片側一車線の道を、前のトラックについて60キロちょっとで走っていると、後ろから次々に抜かれていく。
おいおい。
2台同時抜きとか、すげーな。
しかも大型トラックに抜かれるという、なかなかレアな体験までした。
そして最後にガソリンスタンドへ寄って満タンにする。
洗車用のタオルが置いてあったので、ついでにバンパーの汚れなどを拭いておく。
すると、明らかに虫の汚れではない、凹みのような黒い部分を発見。
「ん?」
借りた時には、こんなのなかったよな。
そこで、乗車前に撮影していた動画を確認する。
……見当たらない。
これは自分がつけたのかもしれない。


返却時に谷亮子に事情を説明する。
「音楽もかけずに走っていたので、衝突音とかはなかったです。駐車場でも他の車とは離れたところに停めてました。ただ、気づいたら1ミリくらいの塗装剥げがありました。これだけきれいにしている車なので、大事にされているんだろうと思います。必要な分は支払いますので、正当に請求してください」
まあ、1万円くらいだろう。
高くてもその程度。
快適にドライブできたし、払う気はある。
すると、谷亮子が頭の中で電卓を弾いているようなそぶり。
そして、他にも傷がないか入念にチェックし始める。
車体の下まで見る。
後部座席も見る。
そしてサイダーの缶を発見。
こっちをチラッと見る。
おいおい。
そんなところ、引き渡し時に両者でチェックしてないぞ。
「それ、前に利用した人のですよ。血糖値が高いから、そんなの飲まないです」
そう言うと、不機嫌そうに缶をゴミ箱へ投げ捨てる。
段々、こっちもイライラしてくる。
向こうもそれを察したのか、旦那さんを連れてきて事情を説明する。
旦那さんと話す。
「この1ミリくらいの塗装剥げなんですけど、心当たりはありません。ただ、ガソリンスタンドでタオルがあったので、車を拭いていて見つけました。借りた時の動画には映っていないっぽいので、おそらく私がつけたんだと思います。ただ、音楽も消していたし、衝撃音もなかったので……」
すると、
「音がしなくても、このくらいの塗装は剥がれますよ」
とのこと。
おいおい。
そんなので傷がついていたら、15年も乗っている私のプリウスなんて、もうボロボロじゃないか。
そんな傷、一つもないぞ。
スズキ車はひ弱なのか?
……と思った。
まあ、経緯は置いておこう。
結果がこうなった以上、
「正当に請求してください」
と伝える。
すると今度は、
「こんな傷くらいで請求していたら、レンタカー屋なんてできない」
みたいな話になってくる。
話を合わせていると、
「ここにも傷あるでしょ」
と、フロントガラスを指差す。
確かに。
よく見ないと分からないレベルだけど、傷がある。貸出時には言わなかったぞ。(← ここ重要)
まあ、とにかく谷亮子は納得していなかったようだけど、最終的には請求なしということで決着した。
なんだか腑に落ちない。
払うと言っているのに請求しない。
なぜ?
そこで、札幌へ向かう列車の中で、乗車前に撮影していた動画をツールを使って細かく分析してみる。
すると……
傷が映っている。
よく見ると、他にも虫の汚れが多数。
そういえば、ガソリンスタンドで拭いても拭いても落ちなくて、イライラしたのを思い出した。
……これ、前からの汚れだったのか。
「あれ?」
……そうすると、借りた時からあったってことじゃん。
そこで、ふと思った。
「あっ……」
旦那さん、もしかしてこの傷に心当たりがあったんじゃないか?
どうしようかと思ったけど、谷亮子に電話しておいた。
「傷が小さすぎてスマホレベルでは分からなかったんですけど、ツールを使って動画を確認したら、しっかり傷が映っていました。こうやって電話するか迷ったんですが、気持ちよく取引するために、社内での情報共有や、御社側も貸出時にエビデンスを残すことをお勧めします」
と伝えておいた。
根は悪い人じゃないんだと思う。
ただ、マイルールが強すぎて、一方的だったなという印象。
借りる時に高圧的に忠告されたんだから、こちらも返却後に忠告するくらいはいいだろう。
そんなこんなで札幌へ。
地下通路を歩いていると、歩きスマホの人に抜かれる。
こっちは普通に歩いている。
向こうはスマホを見ながら歩いている。
それなのに抜かれる。
北海道最後の強敵、ヒグマでもなく、レンタカー屋でもなく、札幌市民の歩行速度だった。
ボス戦には完敗したが、これで今回の旅で予定していたランドマーク訪問は、すべて完了!


今日は飲むぞ!
向かった先は、狸小路商店街にある魚系の居酒屋。


お目当てはツブ貝。
これが好きなんだよなー。
注文してみると、やっぱりうまい。
スシローのも美味しいけど、北海道で食べると何か違う。
濃厚というか、奥行きがあるというか。
サンマの刺身、ヒラメ、ニシンの刺身も美味しい。
えっ、じゃがバターに塩辛がついていない、
と思ったが、ホクホクでこれも美味しい。


そして久しぶりに日本酒。
値段を見ると、
「220円???」
なんでこんなに安いの?
店の人に聞くと、この銘柄は契約しているから安いらしい。
「前は180円だったんですよ。40円も値上げしたんです」
えっ。
40円もですかーーー。
大変ですね。
と言ったら、なみなみと注いでくれた。
サービスらしい。
……そして、日本酒と刺身のおかわり。
これが効いた。


店を出るころには、もうヨロヨロ。
「狸6だったよな……。狸2まで歩くの、きついな」
と思いながらも、寄り道をせずに無事帰還。

宿に着くと、漫画喫茶なのに同じところをぐるぐるしている感じがする。
あれ? ここ、さっきも通ったよな?
どうやら酔っている。
やっぱり日本酒は怖いな。
